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定年再雇用の賃金の引き下げは違法??

鳥取市の社会保険労務士の田中伸一です。

 社労士をしていて、よく相談を受けることで60歳を迎えた従業員の賃金をどのように処遇するのかということがあります。もちろん、仕事内容も勤務時間も同じであればそのまま同じ給与を払ってあげたい、という気持ちもある一方で、その世代になるとある程度賃金も高くなっているので、それを今後も払い続けることは経営的には難しいという問題もあります。以前は60歳から老齢年金も支給されていたため、老齢年金とハローワークからの高年齢雇用継続給付金を合わせてなんとか賃金水準を大幅に下げることなく再雇用をするということもできていました。しかし、現在は年金の支給開始年齢も引き上げとなり、男性の場合は昭和36年4月以降に生まれた世代からは完全に65歳からの支給となります。
 
 現状は、かなりの企業が60歳再雇用制度を導入して、賃金の見直しも行っています。相談を受けた際は、やはり引き下げた場合のシミュレーションを行って資料を作成したりします。世間的にも60歳で再雇用である程度の賃金が下がるのは当然なのかなぁというところではないでしょうか。
 
 しかし、先日地裁ではありますが、再雇用後の賃金についてかなり衝撃的な判決がでました。以下、ネット記事より引用します。
 

 同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 東京地裁判決
定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を払うよう勤務先の横浜市の運送会社に求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。佐々木宗啓裁判長は「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する」と認定。定年前の賃金規定を適用して差額分を支払うよう同社に命じた。
労働契約法20条は、正社員のような無期雇用で働く人と、再雇用など有期雇用で働く人との間で、不合理な差別をすることを禁じている。弁護団によると、賃金格差について同条違反を認めた判決は例がないという。弁護団は「不合理な格差の是正に大きな影響力を持つ画期的な判決だ」と評価。定年を迎えた社員を別の給与水準で再雇用することは多くの企業が慣行として行っており、今回と同様の仕組みをもつ企業に波紋が広がりそうだ。
判決によると、3人は同社に21~34年間、正社員として勤務。2014年に60歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用された。業務内容は定年前と全く同じだったが、嘱託社員の賃金規定が適用され、年収が約2~3割下がった。
判決は「『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理だ」と指摘。この会社については「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」として、特段の事情はなかったと判断した。
コストを抑制しつつ定年後の雇用確保のために賃下げをすること自体には「合理性はある」と認めつつ、業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているという証拠はないと指摘。「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」と述べた。
会社側は「運転手らは賃下げに同意していた」とも主張したが、判決は、同意しないと再雇用されない恐れがある状況だったことから、この点も特段の事情にはあたらないと判断した。
運送会社は判決について「コメントしない」としている。
(朝日新聞デジタル 2016年5月13日)
 

 これについては、個人的にもかなり衝撃を受けました。業務内容、勤務時間が同じで賃金が下がるというのはたしかに労働契約法からみて違法といえるのかもわかりません。今回の事案はあくまでも個別事案なのですべての再雇用で賃金を引き下げることが違法ということにはならないと思いますが、それでも一度は労働条件に同意した事実がありながら、その同意したことも無効とされました。

 みんながそれぞれの立場があるので、この判決については賛否両論で当然だと思います。誰でも賃金が下がることがうれしいはずはありません。働いた分は当然に対価として受け取るのは労働者の権利です。ただ、ここでこれまでの日本の賃金制度について考えると、これまでは年功序列で年齢が高くなるほど、給与も上がるという仕組みで、若いうちは我慢しろ、でも経験を積んでいくと給与も高くなるというのがイメージだったと思います。熟練工とかはその考えでもたしかに、経験イコール能力といえると思います。現代はパソコンが業務のかなり部分を占めるようになりました。年だからパソコンは無理と言って避けることはできない時代になっています。そうなったときに本当に経験や勤続年数が能力の評価とイコールとは言えないと思います。このあたりは経営者としては悩むところですが、長年貢献してくれた従業員は本当に大切だと思います、ただ中小企業では給与の原資は決まっています。そうなると若い世代の給与もなんとかしたいと思った時に、再雇用で引き下げた分を若い世代の給与に配分することも考えられると思います。

 ずっとデフレが続いて特に若い世代は給与がなかなか上がらない時代に社会に出てきました。給与が上がらないのに社会保険(厚生年金保険、健康保険)の負担はどんどん増しています。昔は医者にかかっても医療費負担が1割で済んだなんて今では考えられないと思います。それに消費税も増税されて、本当に若い世代は給与も低く抑えられている上でのことなので、なかなか結婚すらできないのもわかります。車をはじめ日本の消費が全体的に落ち込んでいるといわれていますが、若い世代にしては、買いたくても買えない状況もあると思います。

 世代間の争いとは言いたくないですが、60歳を超えるとやはり体力的には衰えも出てきます。いくら同じ業務でも本当にバリバリこれまでと同じで働けるかといえば、そうはいかないと思います。「同一労働同一賃金」という言葉もありますが、これはこの制度が根付いている欧州なんかの例を見ても、同じ職種と同じ能力なら賃金は同じと考えであって、同じ職種なら能力は関係なく賃金は同じというわけではありません。そうしてみると、高齢者のこれまでの経験や技術はもちろん尊敬しますが、もう少し再雇用について話し合いの余地があるのではないかと個人的には考えます。

 今回の判決で多少企業の再雇用制度にも影響を及ぼすことがあると思います。まぁ、上告はされると思いますが、動向は注視深く見ていく必要があると思います。各個人の事情はそれぞれあると思いますが、一般的には子育てを終えて、住宅ローンもある程度払い終わって、さらに退職金も支給されるとこともいったことも考えると、再雇用で柔軟な働き方を選択してもっとゆとりを持って働くというのもありだと思いますし、少しでも次世代の後輩のことも考えてあげてほしいなぁと思ったりもします。これはあくまでも個人的な考えなので、今回の判例のように再雇用で賃金引き下げは高齢者の労働意欲を削いだり、そもそも同じ業務なら賃金の引き下げは受け入れなれないという考えもあると思います。いろいろと難しいところですが、ただ今回の判例が再雇用制度の在り方に一石を投じたことは間違いないと思います。


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リワーク

Author:リワーク
鳥取市の社会保険労務士の田中です。日々の雑記からビジネス本の紹介から趣味の話まで、色々書いていきます。
企業の経営者、人事・総務担当の方からビジネスマンの方まで、役立つ情報をお届けいたします。
気軽になんでも相談してもらえる社労士を目指して、日々奮闘中です!お問い合わせは tanaka@rework-tottori.com 田中まで

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